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フィアット126 01(雨の日に拾ってきた子犬)

Fiat126

/雨の日に拾ってきた子犬/

「かわいそうに。この子ビショ濡れじゃないの!

早く家に入れて拭いてあげなきゃ風邪をひいちゃうよ」

 

雨にぬれた126を見て思わずカミさんが言った。

不安定なアイドリングで寒そうに体を震わせ

、下を向いた126は

雨の日に拾ってきた子犬のようだった・・・

 

「2か月ちょっと出張なんや126の面倒頼めるか?」

10月のある日しばらく音沙汰がなかったMからメールがきた。

 

「クルマ好きの俺には天職よ♪」

市内の修理店に就職が決まったMは嬉しそうに言った。

 

「ディーラーの方が給料いいんじゃないか?」と聞くと、

 

「ディーラーやとそこのメーカーのクルマばっかやろ、

修理屋やったらベンツ、BMW、

ひょっとするとフェラーリもありかもハハハハ」と笑うM

 

しかし最近、歳も歳なので整備から管理職にと会社が言うらしい。

 

「俺はクルマが好きなんや人にとやかく言うのはすかん!」

 

頑固だがそこがMのいいところでもある。

アイドリング不調の原因はすぐに分かったエアフィルターの目詰まりだった。

洗車して社内もきれいにした。

ポイント調整してタイヤのローテーションも終わり。

126は元気な子犬に戻った♪

でもどうしてもハンドルのベタ付きだけは取れなかった。

雨がみぞれに変わる頃Mが126を引き取りに来た。

 

「悪い、悪い、おお!洗車してくれたんかサンキュー」

 

「フィルター詰まっとたぞ。整備士やろメンテしろよ」

 

「俺はクルマも女房も釣った魚に餌はやらん主義や」

 

「嘘言え!今でも奥さんにベタ惚れやて有名やぞ」

 

「茶店でも行こか?」

 

コーヒーでも・・・

のはずがMはどうやら腹が減ってるらしく牛丼屋に到着。

牛丼を口いっぱいに頬張りながらMが店中に響くような大声で言う。

 

「さっきの信号で隣に止まった黒のムーブのおねーちゃんこっち見て笑っとったな、

ありゃ俺に惚れたな♪」

 

「126にデブが二人も乗ってクルマがパンパンになっとるから笑っとったんや」

笑いながら私が答えると・・・

 

「がはははははは」

 

Mは豪快に笑い、小さい頃の癖でしきりに口を手で拭っていた。

どれだけ拭いても126のハンドルがベタベタしている理由が分かった。

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