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/青いきんと雲/
シュンちゃん自慢の青いきんと雲
【シュンちゃんはコブラをそう呼んでる】
そのきんと雲に話の流れで乗らなきゃならないことになった。
「やれやれ」
軽く小さなドアを開け助手席に滑り込む。
4点式のシートベルトで身体を固定して、
大きく深呼吸。
さっきから隣の運転席でマシンガンのようにしゃべり続けているシュンちゃん。
「ええか子供やないんやで手だしたらあかんで。ほんで・・・・」
どうやらコブラに乗る時の作法らしいのだがドキドキで耳に入らない。
生返事をしているとセルの回る音・・・
あっけなく大排気量のⅤ8が目を覚ました。
「ええか?ほな行くで」
自分がエンジンの一部になってしまったような振動。
サイドマフラーから飛び出るほとんど暴力レベルの排気音。
顔に当たる凶暴な風。
なんかの間違いで獰猛な野獣の背中に跨ってしまったような後悔。
エンジンがかかる前には饒舌だったシュンちゃんも、
蟹を食べ始めたおばさんのように喋らなくなった・・・
コルビューのバケットシートに身体がめり込む。
風景が細かく千切れて後ろに吹き飛ぶ。
首が痛い!
2速、3速、おいおいどこまで出すんや!
ギアが4速に入ってやっと余裕が出来て後ろを振りかえると、
遥か彼方のスタート地点に雲が出来ていた。
「熱っつ!觔斗雲乗る時は、じょり(サンダル)で乗るとエンジンの熱で足やけどするわ。
耐火靴下履かなあかんな♪」
「靴はけよ!」
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