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/初恋のクルマ/
私は小学4年生の夏、
同じく車好きのI君と“車ノート”を作っていました。
この挿絵解説入りの車ノートには特別編の【外車ノート】が存在した。
国内版“車ノート“はブルーバード310や初代コロナ、
日産と合併する前のプリンス自動車製ウルトラQでおなじみ、
スカイラインスポーツなど着々とページ数を増やしていったのだけれど・・・
田舎でしかも昭和30年代、
外国車といえばポンティアックやビュイックなど、
大振りのアメリカ車が走る姿をたまに見かける程度。
ましてや近くで見る機会もなく【外車ノート】はお寒いありさま。
そんな折I君が市内で見かけたフォルクスワーゲンタイプⅠ【通称ビートル】のねぐらが判明。
二人して見に行くことに。
大きく優雅なフェンダー、
屋根から一筆書きで続く柔らかなライン、
愛嬌のある丸いライト、
しゃれたホワイトリボンのタイヤ、
その時代の国産車とは別格の美しさだった。
訝しげに現れた身体の大きなオーナーは意外や優しい人で、
どこの誰とも分からないクルマ好き小学生に社内やエンジンまでかけて見せてくれた。
アイボリーの上品なビニール・レザー シートの手触り。
ホーンリングが光る、黒いエボナイトのハンドル。
丸く高い天井。
「ビートル見たかったら何時でもおいで」
国産車とは違う低いエンジン音が、
冗談を言っては大きな声で笑うオーナーと重なった・・・
栄えある【外車ノート】第一号車に輝いたその薄いブラウンのビートルは、
その日から二人の“駆け出し車マニア”にとって忘れられない一台になった。
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