top of page

OSHIGAKE STORY


OSHIGAKE_STORY

パン、パン、・・・・

1983年式アウトビアンキA112アバルト。

この当時内装にお金のかかったクルマも少なくましてやイタリア車、

雨の降り出しに気づくのはどのクルマより速い。

「あ~あ降ってきちゃったか」

長い間立ち読みしていたことを後悔しながらタバコを咥える。

キーを回す豪快な排気音とともに目覚める112・・・

沈黙・・・・

電装品が入りぱなしになっていなかったか大急ぎで確認する。

「やれやれまたか」

そこはイタリア車原因不明の立ち往生は標準装備。

ここは郊外の本屋そこに持ってきて雨、通りすぎる人もまばら・・・

咥えたハイライトにマッチで火を付け思いっきり深く吸い込む。

「しょーがないやるか」

イグニッションをON、ギアをニュートラルにして、

サイドブレーキを緩めクルマから降りる。

ドアを開けたまま外からハンドルを握りスタート。

タイヤを標準の135から165に換えた自分を呪いながら両足に力を込める。

3キロ・5キロ・7キロ・10キロいい調子

「俺まだまだやれるやん♪」

すかさずクルマに飛び乗り素早くクラッチを切りギヤを3速に入れ

間髪入れずにクラッチを繋ぐ減速Gがかかる。

ボボボ・・・・・ボッ

「だめか」

息が上がる。

タバコを咥えるが第2ラウンドのことを思い箱に戻す。

腿がすでにパンパンである。

雨はいよいよ本降り

「俺なんか悪いことしたか?」

タオルで頭を拭きながら考えた。

思い当たるふしがいっぱい出てきたので考えるのを止めた。

もう何も考えまいタオルを頭に被り第2ラウンド・・・

3キロ・5キロ・7キロ

息が上がる11月というのに流れる汗が目に入り痛い。

クルマに飛び乗る・・・・

ボッボッボッ・・・グワッ

さっきよりいい感じ♪でも・・・・

軽いA112といえども680キロ、残されたチャンスはせいぜいあと一回。

頭の中でリングアナウンスが響く

「いよいよ残すは最終ラウンド不死鳥のようにエンジンは甦るのか、

はたまた無情なレッカーか!」

息を整えていると自転車に乗った日に焼けた若者3人が通りかかった。

地獄で仏、わらをも掴む思いでお願いしてみた。

最初若い3人は゛押しがけ”の意味が分からず戸惑っていたが、

面白そうだということで快諾。聞けば3人はサッカー部、

鬼に金棒である!

後に回った3人が「せーの!」で走り出すと・・・

3キロ・7キロ・10キロ・15キロ速い速い♪

運転席の私が一気にクラッチを繋ぐと・・・

グオン~~~♪

快音!さすがサッカー部!

3人に丁重にお礼をいい顔上げると彼らもニコニコ顔、

「面白かった!困ったらいつでも押すから」

雨の降りしきる中、嫌な顔ひとつしないで押してくれた3人。

本当にありがとう!

あれから30年君たちは元気でいるだろうか、

あの時君たちに出会えていなければ変な外車に懲りて無難な国産車に乗り

このサイトも開設していなかったかもしれない。

人の優しさ温かさに包まれてクルマの楽しさを伝えられれば幸せです。

Komentarze


bottom of page